らぬ訳に行かぬ、秀子を保護したい一心で、殆ど其の他の事は打ち忘れて秀子の前へ立ち上った、権田も秀子を追う様にして茲へ来た、硝燈《らんぷ》の光まで青く映ずる盆栽の蔭で三人顔と顔とを見合わせた。

第二十三回 少しの間

 顔見合わせた三人の中、一番驚かなかったのは秀子である。一旦は驚いたが直ぐに鎮まり、宛も余の保護を請う様に余の蔭へ立ち寄った、実に女にしては珍しいほど胆の据った落ち着いた気質で有る、男にしても珍しかろう。
 権田時介は殆ど譬え様の無いほど驚いた。暫くは無言で余の顔を見て居たが、頓て余と知るが否や、「ヤ、ヤ、丸部道九郎君」と云って途切れ「人もあろうに、丸部君が茲に居られたとは、エ、不注意過ぎました」と、非常に、余に立ち聴せられたのを悔む体だが、併し流石は男だ、愚痴も何にも云わずに庭の方へ立ち去った。
 余は何う考えても権田と秀子の関係が分らぬ、夫婦約束などのない事は無論で有る、思い思われる仲ですらないのだ、イヤ権田の方は一生懸命に思って居るけれど秀子の方では何とも思って居ない、夫だのに秀子が一身の命令権を権田に与えて有るのは何の訳だろう、権田の秀子に迫ったのは恐迫と云えば恐
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