だ、権田「此の様な顔にとて、元から美人に生まれて居るから誰も恨む事は有りません、若し貴女は、私の言葉を聞かず、妻と云う約束をせずに、私を敵に取ったら何うなると思います、今でさえ御自分で運の盡きだと云う程の敵が有りますのに私から恨まれれば」秀子「ハイ貴方に恨まれたら此の世に居る事さえ出来ません、夫は貴方が能く御存じです」権田「それ御覧なさい。私を敵に取っては貴女の身も立ちますまい、夫だのに何故生涯を私の保護の下に置く事が出来ません、夫婦と為らねば決して長い生涯を助け合うと云う道はないのです」秀子「貴方は恐迫なさるのです、困って居る女を恐迫するとは紳士の成され方で有りません、貴方が紳士らしくない振舞を為さって爾して私に愛せよとは御無理です、紳士の心のない人を所天とする事は出来ません」
 権田「ハイ紳士か紳士でないか知らぬが、有らゆる手を盡していけぬ時は私も恐迫も用います、腕力も用います」
 争いは次第に荒々しく成って権田は終に秀子の手を捕えようとした様子だ、秀子は逃げる様に立って、丁度余の居る所へ馳せて来た、余は茲に潜んで居た事を知られ、秀子に紳士らしくないと思われるは辛いけれど最早立ち上
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