夫は面白いが最《も》う藻西太郎が白状して仕舞たよ、全《すっ》かり白状したから外に何の様な疑いが有ても自然に消滅する訳だ」と云い取上る景色も無きを猶も目科が喋々《くしゃ/\》と説立《ときたて》て漸くの事に「然《しか》らば」との変事《へんじ》を得、生田なる者に対する逮捕状を認《したゝ》めて差出すや目科は受取るより早く、余と共に狂気の如く裁判所を走り出、待《また》せある馬車に乗り、ロイドレ街を指して馬の足の続く限り走《はしら》せたり、頓《やが》てロイドレ街に達《たっす》れば町の入口に馬車を待せ、幾度か彼の嚊煙草にて強《しい》て顔色を落着けつゝ、二十三番と記したる館を尋ねて、先ず其店番に向い「生田さんは居るか」と問う店「はいお内《うち》です、四階へ上れば直《すぐ》に分ります」と答う、目科は階段《はしごだん》に片足掛けしが忽《たちま》ち何事をか思い出せし如く又も店番の許《もと》に引返し「今日は生田に一杯振舞う積りで来たが生田は毎《いつ》も何の様な酒を呑む店「何の様な酒ですか、常に此筋向うの酒屋へは能く行きますが目「好し、彼所《あすこ》で問うたら分るだろう」と云い大足に向うの酒店《さかみせ》に馳《
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