肉刺、小刀《ないふ》を我《われ》劣《おとら》じと働かせながらも様々の意見を持出し彼是《かれこれ》と闘わすに、余も目科も藻西太郎を真実の罪人に非ずと云うだけ初より一致して今も猶お同じ事なり、罪人に非《あらざ》る者が何故に白状したるや是れ二人とも合点の行かぬ所なれど個《こ》は目下の所にて後廻しとする外無ければ先ず倉子の事より考うるに、倉子も彼《あ》の夜両隣の細君と共に我家に留りし事なれば実際此罪に手を下せし者にあらぬは必定《ひつじょう》なり、去ればとて犬の返事に詰りたる所と云い猶お其外の細かき様子など考合《かんがえあわ》せば余も目科も大《おおい》に疑いあり、手は自ら下さぬにせよ、目科の細君が言し如く此犯罪の発起人なるやも知れず、縦《よ》し発起人と迄に至らずとも真《まこと》の罪人を知れるやも知れず、否《いな》多分は知れるならん。
爾《さ》すれば罪人は誰なるや此罪人がプラトを連居《つれい》たる事は店番の証《しょう》茲《こゝ》にて明白なれば何しろプラトが我主人の如く就従《つきしたが》う人なるには相違なしプラトは余等に向《むか》いても幾度か歯を露出《むきいだ》せし程なる故、容易の人には従う可《べ
前へ
次へ
全109ページ中93ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
黒岩 涙香 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング