女の心から出て居ます、夫《それ》は私しの所天《おっと》に聞ても分ります、ねえ貴方」と一寸《ちょい》と目科に念を推して更に「のみならず店番の言立《いいたて》でも大概は察せられるじゃ有ませんか、店番は何と云いました倉子と云う女は大変な美人で、望みも大きく、決して藻西太郎の様な者に満足して居る者で無くて、夫で彼れを鼻の先で使い兼ないと云た様に私しは今聞取りましたが、爾《そう》ですか余「爾です細「して又藻西が家の暮しは何《なん》の様です随分困難だと云いましょう、ですから妻は自分の欲い物も買無《かわな》いし、現在金持の伯父が有ながら此様な貧苦をするのは馬鹿/″\しいと思ッたに違い有りません、既に昨年とかも藻西太郎に勧め伯父から大金を借出させようとした程では有ませんか、最早《もは》や我慢が仕切れ無く成た為としか思われません、夫《それ》を老人が跳附けて一文も貸さ無《なか》ッたゆえ自分の望みは外れて仕舞い老人が憎くなり夫かと云て急に死相《しにそう》な様子も無くあゝも達者では死だ所が自分等の最《も》う歯の抜ける頃だろう間《ま》が悪ければ自分等の方が却《かえっ》て老人に葬《とぶら》いを出して貰う仕儀《しぎ
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