が何と答うるにやと殆ど気遣《きづかわ》しさに堪えず手に汗を握れども藻西は驚きもせず怪みもせず「なに買たんじゃ有ません余程前から持て居たのです」と答う目「殺した後で其短銃を何うしたか藻「え、別に何うもしません、左様さ投捨て仕舞いました、外へ出てから目「では誰か拾た者があろう、好し/\私《わし》が能《よ》く探させて見よう」読者よ目科は奥の奥まで探り詰ん為め故《ことさら》に斯《かゝ》る偽《いつわ》りの問を設けて、試みながらも其色を露現《あら》わさず相も変らぬ静かなる顔付なり、稍《やゝ》ありて又問掛け「一つ合点の行かぬ事は全体犬を連て行くと云う事は無いよ、あれが大変な露見の本《もと》に成《なっ》た、あの様な者は内へ置て自分一人で行き相《そう》な者だッたのに」此問は何の意にて発せしや余は合点し得ざれども何故か藻西太郎は真実に打驚き「え、え、犬、犬を目「爾よ、プラトと云う黒犬をさ、店番が慥《たしか》にプラトを認めたと云う事だ」此語を聞きて藻西太郎の驚きは殆ど譬《たと》うるに者も無し、彼れ驚きしか怒りしか歯を噛み拳《こぶし》を握りて立ち、何事をか言出さんとする如く唇|屡々《しば/\》動きたるも漸《よ
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