中に得も云えぬ苦しみを感じ右《と》せんか左《かく》答えんかと独り胸の中に闘いて言葉には得出《えいだ》さぬ如く、空しく長き※[#「口+曹」、第3水準1−15−16]《うめ》き声を洩すのみ、此有様|抑《そ》も如何ように見て取る可きか、目科は隙《すか》さず突《つい》て入り「就《つい》て問度《といた》い事が有る、お前は殺すほどあの伯父が憎かッたのか藻「なアに少しも憎くは有ません目「では何故殺した藻「伯父の身代《しんだい》が欲いから殺しました、此頃は商買《しょうばい》が不景気で日々《にちにち》苦しくなるばかりです、夫は同業に聞ても分ります、幸い伯父は金持ですけれど生て居る中は一文でも貸て呉れず、死《しに》さえすれば其身代が独《ひとり》で私しへ転がり込むと思いまして、目「分ッた/\、夫でお前は殺しても露見しまいと思ッたのか藻「はい爾《そう》思いました」あゝ目科は何故《なにゆえ》に斯《かく》も湿濃《しつこ》く問うなるや、余は必ず深き思惑の有る可しと疑い初《そ》めしに果せるかな彼れ忽《たちま》ち語調を変じ「夫は爾《そう》としてお前あの、伯父を殺した短銃《ぴすとる》は何所《どこ》で買《かっ》た」余は藻西
前へ 次へ
全109ページ中55ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
黒岩 涙香 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング