《にん》で仕て仕舞い私には手を掛させぬ程でした、何がなし暇さえあれば掃《はい》たり拭《ふい》たり磨《みがい》たり仕て居るが癖ですから目「給仕の方は女「給仕の方は毎日昼の十二時を合図に私しがお膳を持て来るのです、夫が老人の朝飯です、朝飯が済でから身仕度するが凡《およ》そ二時まで掛ります、大層着物を被《き》るのが八《や》かましい人で毎《いつ》でも婚礼の時かと思うほど身綺麗《みぎれい》にして居ました、身仕度が終ると家を出て宵《よい》の六時まで散歩し六時に外で中食《ちゅうじき》を済せ、夫から多くはゲルボアの珈琲館に入り昔友達と珈琲を呑《のん》だり歌牌《かるた》を仕たりして遅くも夜の十一時には帰て来て寝床《ねどこ》に就きました、ですが唯《たっ》た一つ悪い事にはあの年に成《なっ》て猶《ま》だ女の後を追掛る癖が止みませんから私しは時々年に恥ても少しは謹《つゝし》むが好《よか》ろうと云いました、ですが誰でも落度は有る者《もの》で夫《それ》に若い頃の商売が商売で女には彼是《かれこ》れ云れた方ですから言えば無理も有りますまいが」と云い少し笑いを催し来《きた》れど目科は極めて真面目にて「して梅五郎の許《もと
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