すに伯父は命を取られると云う場合には随分百万|法《フランク》くらいは出し兼ぬと云いました」目科は心の中にて「ふゝむ予審判事は何かの書面を頻《しき》りと書記に写させて居たから梅五郎の身代を残らず調べ上て行たと見えるな」と打呟《うちつぶや》き更に又老女に向い「して梅五郎老人は平生《へいぜい》何《ど》の様な人だッた女「極々《ごく/\》の善人でした、尤《もっと》も少し我儘《わがまゝ》で剛情な所は有ましたが高ぶりは致しません、少し機嫌の能《よ》い時は面白い事ばかり言て人を笑せました、爾《そう》でしょうよ流行社会の理髪師で巴里《ぱり》中の美人は一人残らず彼《あ》の人の手に掛ッて髪をくねらせて貰ッたと云う程ですもの目「暮し向は女「先《ま》ア当前ですねえ、自分で儲溜《もうけた》めた金で暮す人には丁度相当と思われる暮し方でした、夫《それ》かとて無駄使などは決して致しませんでしたが目「夫だけでは確《しか》と分らぬ何か是と云う格別な所が有そうな者だ女「有ますとも老人の室の掃除|向《むき》と給仕とは私《わたく》しが引受けて居ましたもの、大層|甲斐々々《かい/″\》しい老人で室の掃除などは大概《たいがい》一|人
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