、何にしろ此コロップは大変な手掛だ、是が手に入る以上は僕必ず曲者を捕えて見せる」と云終《いいおわ》りて其コロップを衣嚢《かくし》に入《いる》るに此所へ入来るは別人ならず今しも目科が呼置きたる此家の店番にして即ち先刻余と目科と此家に入込しとき店先にて大勢の店子等《たなこら》に泡を吹きつゝ話し居たる老女なり、女「何御用か知ませんが少々用事も有ますので余りお手間の取れぬ様に願います」と云いつゝ老女は目科の差出す椅子に寄れり、目科は何所《どこ》と無く威光高き調子を現わし「少し聞度《きゝた》い事が有るので、是から一々お前に問うから何も彼も腹臓なく答えぬと返てお前の不為《ふため》だよ女「はい心得ました」目科は判事の尋問する如く己れも先ず椅子に寄りて「殺された老人の名は何と云う、女「梅五郎《ばいごろう》と申《もうし》ました目「何時《いつ》から此《この》家《いえ》に住で居る女「はい八年前から目「其前は何所《どこ》に住だ女「夫《それ》まではリセリウ街《まち》で理髪店を開いて居ました、老人は理髪師で身代《しんだい》を作ッたのです目「何《ど》れほどの身代が有る女「確《たしか》には知ませんが老人の甥が時々申ま
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