中程が少し厚くて両の縁《ふち》が次第に細く薄く成《なっ》て居るじゃ無《な》いか余「成るほど爾《そう》だ目「爾《さ》すれば此《この》鋭利《するど》い短剣を曲者は何《ど》うして持て来たゞろう、人に見られぬ様に隠して居たのは明かだ、さア隠すなら何所《どこ》へ隠す、着物の衣嚢《かくし》とか其他先ず自分の身の中《うち》には違い無いが其|鋭利《するど》いものを身の中へ隠すのは極めて険呑《けんのん》だ、少し間違えば自分の身に怪我をするか或は又|剣先《きっさき》の刃を欠くと云う恐《おそれ》が有る、して見れば何かで其剣先を包んで置かねばならぬ、さア何で包んだ、即ち此コロップだろう、コロップは柔《やわら》かで少しも刃を傷める患《うれ》いが無いから夫《それ》で之をそッと其剣先へ刺込で衣嚢《かくし》へ入れて来たのだ余「説き得て妙目「老人を突く時に此コロップを外したが後では最《も》う誰にも認られぬうち早く立去ろうと思うからコロップなどは打忘れて帰たゞろう余「成るほど目「所《ところ》で比コロップには青い封蝋が附いて居るから何か一種の銘酒の瓶に用いて有ッたに違い無い、斯《か》く段々推して行けば次第に捜すのも易くなる
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