役目だ」
斯《か》く一同の意見が全く一変せし所へ、宛《あたか》も外より入来《いりきた》る一巡査は藻西太郎を捕縛に行きたる一人《いちにん》なる可し「唯今帰りました」の声を先に立てゝ第一に警察官の前に行き「命令通り夫々手を尽しましたが是ほど旨《うま》く行《いっ》た事は有ません警「では藻西を捕縛したか、夫《それ》は大変だが巡「はい手も無く捕縛して仕舞いました夫に彼れ全く逃れぬ所を見てか不残《すっかり》白状して仕舞いました警「や、や藻西が白状したとな」
第四回(白状)
罪なき人が白状する筈《はず》なければ藻西太郎が白状せしと云うを聞き一同は言葉も出ぬまでに驚き果て、中にも余の如きは只《た》だ夢かと思うばかりなりき、今まで余の集め得たる証拠は総《すべ》て彼《か》れの外《ほか》に真《まこと》の罪人あることを示せるに彼れ自ら白状したりとは何事ぞ、斯《かゝ》る事の有り得べきや、人々の中《うち》にて一番早く心を推鎮《おししず》めしは目科なり彼れ五六遍も嚊煙草の空箱を鼻に宛《あて》たる末《すえ》、件《くだん》の巡査に打向いて荒々しく「夫《それ》は全く間違いだ、お前が自分で欺さ
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