ヘっきり分りました。
「何という馬鹿な間抜けな奴と笑わないで下さい。私が無意識のうちにあなたに対する私の愛を不自然に押さえていたことは、思いがけなく、こんなところにまで影響していたのだと思いましたから、私は急に息もつけないようなあなたの力の圧迫を感じました。けれども、それが私には、どんなに大きな幸福であり喜びであるか分って下さるでしょう。
「あんなに、あなたのお書きになったものは貪るように読んでいたくせに、本当はちっとも解っていなかったのだと思いますと、何だかあなたに合わせる顔もない気がします。けれどもそれは本当のことなのですもの。そしてあなたはそれをとがめはなさらないでしょうね。今日本当に解ったのですもの。
「そして、また私には、あなたの愛を得て、本当に解ったということは、どんなにうれしいことか解りません。これからの道程だって本当にたのしく待たれます。今夜もまたこれから読みます。一つ一つ頭の中にとけてしみ込んで行くのが分るような気がします。もう二、三日ぐらいはこうやっていられそうです。一杯にその中に浸っていられそうです。
「でも、何だか一層会いたくもなって来ます。本当に来て下さいな、
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