ェから吹聴して歩くほどの一大事でもないのだ。また自由恋愛などという、もうカビの生えた古臭い議論を、今さらながらもったいらしく担ぎ出すこともないのだ。
 けれども、もし世間の奴等が、奴等の道徳を盾に着て、無知な群集の前に僕等を社会的に葬むり去ろうとでも試みようとならば、ご遠慮なく遣って見るがいい。僕等は、僕等自身の事実をますます健実にして奴等にいやというほど見せつけてやるとともに、いくらでもお相手になってやる。あるいは、かえってその方が、さきの五年か十年かすればという時期を、もっと早めてくれることになるかも知れない。
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 (ここでちょっと読者諸君に広告して置くが、前に野枝さんの手紙に出ている、はなはだおやすくない、ただし定価のことでない、僕の論文集『生の闘争』の中の「羞恥と貞操」および『社会的個人主義』の中の「男女関係の進化」と「羞恥と貞操」とは、これらの問題についての僕の宿論を説いたものであるから、ぜひとも御一読を願います。)
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         五

 さて、野枝さん。
 思わず妙なところに力瘤を入れてしまったが、ここまで自分等の思うこ
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