や註釈は、君にとっては、余計な出しゃばりであるかも知れない。しかし、その出しゃばりが僕の好意そのものから出る大した悪くない癖でもあり、かつこの文章が君に宛てた手紙であるところから自然に君のことばかり頭に浮んで来ることをも察してくれれば、君としては許されないこともあるまい。もっとも、こんな書きかたをして、だいぶ僕自身のことを君に言わしたのは、ちょっと怪しからぬずるい遣りかたではあるがね。
 しかし、どうかすれば、もう五年か十年かすれば、こんなふうな内容の、もっとも形式にはいろいろ変りはあろうが、たとえば同じ自由恋愛でもあるいは一夫一婦の、あるいは一夫多婦のあるいは多夫多妻の種々なる形をとることができようが、男女関係は、大して珍らしいことでもなくなって、したがって一々その男や女の心持を公表しなければならないというような必要もなくなるのだろう。
 とにかく僕等は、今の僕等にとっては、というのは僕には最初からだが君や神近にはようやくこの頃になってからのことだから、きわめて平凡なことをやっているのだ。だから、少なくとも僕にとっては、もし世間の奴等さえぐずぐずと馬鹿なことを言わなければ、何にも自
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