だ続く。僕はそれもすっかり話してしまわなければ、僕の責めは済まないだろう。で、もっと話を続けて行こう。)
 彼女はふり返った。
 僕はその前夜彼女が寝ている伊藤をにらみつけた、その恐ろしい殺気立った顔を見ると思いのほか、彼女がゆうべ僕に泣きついて来た時のその顔よりももっと憐れな顔を見た。
「許して下さい。」
 彼女がふり向くと同時に発したこの言葉が僕には意外だった。
 しかし、もうこうなった以上、僕は彼女を許すことができなかった。少なくともその瞬間の僕は、何という理窟はなしに、ただ彼女を捕まえてそこへ叩きつけなければやまなかった。
 僕は起きあがった。そして逃げようとする彼女を追うて縁がわまで出た。彼女はそこの梯子を走り下りた。僕も続いて走り下りた。そして中途で僕は彼女の背中へ飛び降りるつもりで飛んだ。が、彼女の方がほんの一瞬間だけ早かった。彼女は下の縁がわを右の方へ駆けて、七、八間向うの玄関のところからさらに二階の梯子段を登った。僕は梯子段を飛び下りた時から、急に足の裏の痛みと呼吸のひどく困難になって来たのを感じながら、なお彼女を追っかけて行った。
 その二階は、僕の居室の方の二階と
前へ 次へ
全234ページ中231ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
大杉 栄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング