そうだ。

 父は連隊区司令部のすぐそばの、僕等がまだ住んだこともないほどの、小さな汚ない家にいた。そして女中も置かずに、僕のすぐ妹に学校をよさして、大勢の弟妹等の世話やその他のいっさいをやらしていた。
 が、僕の驚いたのは、それよりも父のはなはだしい変り方であった。年はまだ四十三、四だったのだろうが、急にふけて、もうたしかに五十を幾つもこえた老人のようになっていた。そして以前には、うちのことはいっさいを母に任して金のことなぞはつい一ことも言ったのを聞いたことがなかったのに、妙にけちんぼな拝金宗になっていた。
 もっとも、以前からごく質素で、自分で自分の小使銭を持っていたこともなく、また恐らく金の使い道も知らなかったほどなので、その本来のけちんぼうが少しもそとに現れなかったのかも知れない。が、母が死んで、自分でうちの細かい会計までやって見るとなると、これが急に目立って来たのかも知れない。
 とにかく父は、月給や、勲章の年金だけではとてもやって行けない、と言っていた。そして、どうして母が今よりもずっとはでな生活をしていて、それで毎月幾らかずつ残して行ったのかと不思議がっていた。父はそんな
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