はたして軍人生活に堪え得るかどうかということであった。吉野の事件では、将校会議で僕の退校処分を主張した士官もあったそうだが、そして北川大尉の代りに来た国の津田大尉と受持の吉田中尉とのお蔭でようやく助かったのだそうだが、実際僕は退校する方がいいのじゃあるまいかと考えだしたことだ。
下士どもの僕に対する犬のような嗅ぎまわりは、僕の改心に何の頓着もなく続いた。そして時々やはり、何かの落度を見つけた。僕はまず、はたしてこの下士どもの下に辛抱ができるかと思った。彼等を上官として、その下に服従して行くことができるかと思った。尊敬も親愛も何にも感じていない彼等に、その命令に従うのは、服従ではなくして盲従だと思った。
そしてこの盲従ということに気がつくと、他の将校や古参に対する今までの不平不満が続々と出て来た。
僕は初めて新発田の自由な空を思った。まだほんの子供の時、学校の先生からも遁れ、父や母の目からも遁れて、終日練兵場で遊び暮したことを思った。
僕は自由を欲しだしたのだ。
こうした気持はまた読書によってもよほど誘い出されたことと思う。
学校では、学校で渡す教科書や参考書のほかは、いっ
前へ
次へ
全234ページ中118ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
大杉 栄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング