》でならなくなった。殊《こと》にQには彼《かれ》を絶《た》えず凌駕《りょうが》していた敵手《てきしゅ》のAがあったのだ。AとQとはQと私《わたし》との場合《ばあい》におけるがように何《なに》かにつけてAの方《ほう》が上《うえ》になった。Qが凡水論《ネプチュニズム》にかかっているとAは凡火論《ボルカニズム》にかかっている。Qが災異論《カタストロフィズム》にかかっているとAはもうパイエルの進化論《しんかろん》にかかっているという調子《ちょうし》がQをますます勉強《べんきょう》させていたのである。しかし私《わたし》はQがAに圧迫《あっぱく》されているこの状態《じょうたい》に対《たい》して復讐《ふくしゅう》の快感《かいかん》よりも応援《おうえん》の快感《かいかん》を感《かん》じて鞭《むち》を打《う》った。ある日《ひ》の研究報告会《けんきゅうほうこくかい》でQがAに打《う》ち負《ま》かされたときなどには私《わたし》は私《わたし》がQであるかのように萎《しお》れてしまった。それは丁度《ちょうど》私《わたし》がQからミナスゲラスで刺《さ》されたときのように。QはAから岩石学《がんせきがく》の最大問題
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