体《からだ》に触《さわ》ってみた。すると、私《わたし》の指先《ゆびさき》は地上《ちじょう》からつながっているただ一|本《ぽん》の線《せん》のように長《なが》い間《あいだ》全《まった》く忘《わす》れていた地上《ちじょう》の習慣《しゅうかん》や匂《にお》いや温度《おんど》を私《わたし》の体内《たいない》へ送《おく》って来《き》た。だが、それは隙間《すきま》から吹《ふ》き込《こ》む鋭《するど》い風《かぜ》のように、今《いま》はただ私《わたし》の胸《むね》を新鮮《しんせん》にするだけだった。私《わたし》はリカ子《こ》を抱《だ》き寄《よ》せると、紙《かみ》の上《うえ》へ「結婚《けっこん》」と書《か》いた。するとリカ子《こ》はその横《よこ》へ「有《あ》り難《がと》う」と書《か》き添《そ》えた。二人《ふたり》は新《あたら》しい夫婦《ふうふ》の生活《せいかつ》の第《だい》一|歩《ぽ》を雲《くも》の真中《まんなか》に置《お》いた。微細《びさい》な水粒《みずつぶ》が翼《つばさ》の裏《うら》へ溜《たま》ってはぶるぶる慄《ふる》えながら腋《わき》の下《した》へ流《なが》れていった。翼《つばさ》を支《ささ》えた
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