いたのだ。私《わたし》をも感動《かんどう》せしめるQの美徳《びとく》と才能《さいのう》とは二人《ふたり》の間《あいだ》を昔《むかし》から流《なが》れていたリカ子《こ》にだけ映《うつ》らない筈《はず》はないのである。間《ま》もなくリカ子《こ》の心《こころ》はQの幻想《げんそう》の為《ため》に日々《ひび》私《わたし》を忘《わす》れ出《だ》した。これをいい換《か》えると、その最初《さいしょ》に私《わたし》に身《み》を与《あた》えたリカ子《こ》の中《なか》からデアテルミイの効力《こうりょく》がだんだん影《かげ》を潜《ひそ》めて来始《きはじ》めたのだ。機械《きかい》と一|緒《しょ》になって彼女《かのじょ》を征服《せいふく》していた私《わたし》が機械《きかい》から去《さ》られると、それに代《かわ》るべき何《なに》ものかを彼女《かのじょ》に与《あた》えなければならなくなったのだ。しかし、私《わたし》にはそれが何《なに》ものであるか分《わか》らなかった。初《はじ》めの間《あいだ》は私《わたし》はリカ子《こ》のそれが頭脳《ずのう》の成長《せいちょう》だと思《おも》って忍《しの》んでいた。所《ところ》が彼
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