かい》が恐《おそ》らくその大半《たいはん》をこっそり占《し》めていようなどとは思《おも》っていなかった。私《わたし》はそれからというもの夜盗《やとう》のように家人《かじん》の隙《すき》を狙《ねら》うと同時《どうじ》にリカ子《こ》と結婚《けっこん》する準備《じゅんび》ばかりに急《いそ》ぎ出《だ》した。私《わたし》はそのことをQに話《はな》して良《よ》いものかどうかと初《はじ》め暫《しばら》くの間《あいだ》は迷《まよ》っていたのだが、とうとうそれを切《き》り出《だ》した。すると、Qは暫《しばら》く黙《だま》っていてから私《わたし》の顔《かお》を見《み》て、大丈夫《だいじょうぶ》かと一言《ひとこと》いった。私《わたし》はQが黙《だま》っているのはQがリカ子《こ》を愛《あい》していたからに違《ちが》いないと思《おも》ってひやりとしていた所《ところ》なので、Qがそういうと初《はじ》めてQは私《わたし》の生活《せいかつ》を心配《しんぱい》していてくれたが為《ため》に黙《だま》っていたのだと気《き》がついた。私《わたし》はQに感謝《かんしゃ》をし、Qにもいわずリカ子《こ》とそういう状態《じょうたい》
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