きようじ》す竜頭《りゆうとう》の冑《かぶと》 想見る当年怨毒の深きを
     曳手《ひくて》・単節《ひとよ》
荒芽山《あらめやま》畔路《はんろ》叉《ふたまた》を成す 馬を駆て帰来《かえりきた》る日|斜《かたぶ》き易し 虫喞《ちゆうしよく》凄涼夜月に吟ず 蝶魂|冷澹《れいたん》秋花を抱く 飄零《ひようれい》暫く寓す神仙の宅 禍乱早く離《さか》る夫婿《ふせい》の家 頼《さいわ》ひに舅姑《きゆうこ》の晩節を存するあり 欣然|寡《か》を守つて生涯を送る
     犬田小文吾《いぬたこぶんご》
夜深うして劫《こう》を行ふ彼何の情ぞ 黒闇々中刀に声あり 圏套《けんとう》姦婦の計を逃れ難し 拘囚《こうしゆう》未だ侠夫の名を損ぜず 対牛《たいぎゆう》楼上無状を嗟《さ》す 司馬《しば》浜前《はままえ》に不平を洩らす 豈|翔《た》だ路傍|狗鼠《くそ》を誅《ちゆう》するのみならん 他年東海長鯨を掣《せい》す
     船虫《ふなむし》
閉花羞月好手姿 巧計人を賺《あざむ》いて人知らず 張婦李妻定所無し 西眠東食是れ生涯 秋霜粛殺す刀三尺 夜月凄涼たり笛一枝 天網|疎《そ》と雖ども漏得難《もれえかた》し 閻
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