王廟裡|擒《きん》に就く時
     犬坂毛野《いぬさかけの》
造次《ぞうじ》何ぞ曾て復讎を忘れん 門に倚《より》て媚《こび》を献ず是《これ》権謀 風雲帳裡無双の士 歌舞城中第一流 警柝《けいたく》声は※[#「さんずい+冗」、第4水準2−78−26]む寒※[#「土へん+喋のつくり」、第4水準2−4−94]《かんちよう》の月 残燈影は冷やかなり峭楼《しようろう》の秋 十年剣を磨す徒爾《とじ》に非ず 血家血髑髏を貫き得たり
     犬飼現八《いぬかいげんはち》
弓を杖ついて胎内竇《たいないくぐり》の中を行く 胆略|何人《なんぴと》か能く卿に及ばん 星斗満天|森《しん》として影あり 鬼燐《きりん》半夜|閃《ひらめ》いて声無し 当時武芸前に敵無し 他日奇談世|尽《ことごと》く驚く 怪まず千軍皆|辟易《へきえき》するを 山精木魅《さんせいぼくみ》威名を避く
     犬村大角《いぬむらだいかく》
猶ほ遊人の話頭を記する有り 庚申山《こうしんやま》は閲《けみ》す幾春秋 賢妻生きて灑《そそ》ぐ熱心血 名父《めいふ》死して留む枯髑髏 早く猩奴《しようど》名姓を冒すを知らば 応《まさ》に犬子仇讐を拝す
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