八犬伝』を読むを聞いて戯れに二十首を作る
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[#地から2字上げ]橋本蓉塘

     金碗孝吉《かなまりたかよし》
風雲惨澹として旌旗《せいき》を捲く 仇讎《きゆうしゆう》を勦滅《そうめつ》するは此時に在り 質を二君に委《ゆだ》ぬ原《も》と恥づる所 身を故主《こしゆう》に殉ずる豈《あに》悲しむを須《ま》たん 生前の功は未だ麟閣《りんかく》に上《のぼ》らず 死後の名は先づ豹皮《ひようひ》を留む 之《これ》子生涯快心の事 呉《ご》を亡ぼすの罪を正して西施《せいし》を斬る
     玉梓《たまづさ》
亡国の歌は残つて玉樹空し 美人の罪は麗花と同じ 紅鵑《こうけん》血は灑《そそ》ぐ春城《しゆんじよう》の雨 白蝶魂は寒し秋塚《しゆうちよう》の風 死々生々|業《ごう》滅し難し 心々念々|恨《うらみ》何ぞ窮《きわ》まらん 憐れむべし房総佳山水 渾《すべ》て魔雲障霧の中に落つ
     伏姫《ふせひめ》
念珠|一串《いつかん》水晶明らか 西天を拝し罷《や》んで何ぞ限らんの情 只道下|佳人《かじん》命|偏《ひとえ》に薄しと 寧ろ知らん|毒婦恨《どくふのうらみ》平らぎ難きを 業風《
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