《へい》を頻りに論じてるが日本では先づ当分トラストが行はれるほど進歩しない。一緒に大きく儲けやうとはしないで他人《ひと》に儲けられまい儲けられまいとケチ/\[#「ケチ/\」に傍点]してゐる。裏店《うらだな》根性だ……
「併し頭の禿げた連中は仕方が無いとして若い者は奈何《どう》かと云ふと、矢張《やつぱり》駄目だ。血気盛んな奴が懐中手《ふところで》をして濡手で粟の工風《くふう》ばかりする老人連の真似をしたがる。実業家といふと聞えが好いが近頃の奴は羽織ゴロの方に近い。立派な新教育を受けた若い連中《てあひ》までが斯様《こん》な怪しからない所為《まね》をしたがるから困る。例へば商業学校、あれが少しも役に立ちませんナ。元来《いつたい》ビジ子スは実地に経験を積んで然る後覚えられるもんで、学校の教場で教師の講義《レクチユア》を聞いたつて解るもんぢやアない。銀行の取引実務とか手形交換の実習とか云ふものなら昔《むか》しの商法講習所位のものを置けば沢山だ。経済学や法律学なら大学で、教へてゐる、私立の専門学校もある。実際また商業学校で教へる位の片端《かたはし》を噛《かじ》つたつて何の役に立つもんですか、無駄な
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