青年実業家
内田魯庵

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)全《まる》で

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)畢竟|空株《からかぶ》の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ケチ/\[#「ケチ/\」に傍点]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)本《も》と/\
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「全《まる》でお咄《はなし》にならんサ。外債募集だの鉄道国有だのと一つの問題を五年も六年も担ぎ廻る先生の揃つてる経済界だもの。近ごろ君、経済書の売行が好《い》いさうだが、何の事は無い、盗賊《ぬすびと》を見て縄を綯《な》ふやうなもんだ。戦争以来実業が勃興したといふのが間違つてる。何が勃興してゐるもんか、更に進歩しないと云つても宜しい、畢竟|空株《からかぶ》の空相場《くうさうば》が到る処に行はれたので一時に事業が起つたやうに見えたが、本《も》と/\が空腹《すきはら》に酒を飲んだやうなものでグデン/\に騒ぎ立つた挙句が嘔吐《へど》を吐《は》いて了うとヘタ/\に弱つて医者の厄介になると同様だ。我々の会社を見給へ、重役様がボーナス
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