事《こ》つた。此《この》金の足りない中で、殊に経費少ない文部省が這般《こん》な無用の学校に銭を棄てるのは馬鹿げてる。第一|貴処《あなた》、困る事には此役に立たない商業学校の卒業生が学校を出れば一廉《ひとかど》な商業家になつた気でゐる、高等商業学校を初めとして全国に商業学校が各府県に一つ宛《づゝ》ある、毎年卒業生が千人も出るでせう。百人に一人位|真摯《まじめ》なものもあるかも知れないが、大抵は卒業すると直ぐ気障《きざ》な扮装《なり》をして新聞受売の経済論や株屋の口吻《くちまね》をしたがる。先輩の対手《あひて》にならないのは仕方が無いが後継者《あとつぎ》の若い者までが株屋や御用商人の真似をしたがるから困る。其《その》証拠には貴下《あなた》、斯ういふ学校出身者で細くとも自分で事業《しごと》を初めた人がありますか。多い中には有るかも知れないが、先づ学校を出ると会社とか銀行とかへ入つて端多《はした》月給でも貰つて気楽に飯の喰へる工風をする。校長初め教師までが其方を奨励する。実業家達は小才の利く調法な男を廉《やす》く傭使《つか》へるのだから徳用向きの仕入物を買倒《かひたふ》す気で居る。然るに高い学
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