。営業上の参考書である。が、丸善が最も誇るべきものゝ一つは此外国の各種の目録で、Kが専ら其衝に当って前後十何年の丹精を費やした努力の賜であった。
図書館の設備と書店の用意とは自ずから異なってるから、丸善に備えつけた目録を図書館に需めるは不当であろうが、日本の普通図書館には求められない特殊の外国書目が丸善には準備されているのだ。尤も書肆であるから学術上の貴重なる書目を尽く揃えていたわけでは無いが、試に其の一つ二つを云えば、Heinsius "Bucher−Lexicon"が一七〇〇年から一八九二年まで二百年間尽く揃っていた。ロレンツの仏蘭西書目が一八四〇年から今月まで六十年間全部揃っていた。レイボールドの『米国書目』は米国書目中の貴重書として珍重されて時価著るしく騰貴しているが、此の貴い書目も丸善の誇りの一つであった。学術上から云ったら余り貴くないかも知れぬが左に右く恁ういう日本には珍らしい書目が十数種あった。
現行書目にしも、英独仏露伊西以外、和蘭、瑞西、波蘭、瑞典、那威、澳太利、匈牙利、葡萄牙、墨西哥、アルゼンチン、将た印度、波斯、中央亜細亜あたりまでの各国書目を一と通り揃えていた
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