字下げ]
この鳥の啼く聲はギヨブツコー、ギヨブツコー、或はグブツクオーと聽えるものを凡そ一秒弱の間を※[#「※」は「插」のつくりの縦棒が下に突き抜けている、210−13]んで繰返し、時々はギヨブツクオー、コー、或はギヨブツ、ギヨブツ、クオーを加へる。ギヨブツクオー、コー、の場合には第二音クオーと第三音コーとの間に、第一音と第二音との間よりも、少し長い間を置き、且つ第三音コーは第二音よりも調子低く、またギヨブツ、ギヨブツ、クオーの場合には各間隙に長短はなく、殆んど三音を連唱する。下略。
[#ここで字下げ終わり]
 云々と書いてある。流石によく調べてある。強ひて書けば先づ斯うであらう。が、本物《ほんもの》とこれとの差は雀と佛法僧との差に相等しい。
 枕許の水を飮むために眼を覺す。
 啼いてゐる。
 夜の更けたゝめか、或は麓近く移つて來たか、宵の口より一層澄んで聞える。
 起きて窓に凭ると、月も曇を拭つて照つてゐた。山の森の茂みにも月の光があつた。そして、宵の口は多く右の、ギヨブツコー、ギヨブツコー、の二聲づつを啼いたに夜の更けてからは、ギヨブツ、ギヨブツ、コーの三聲を續ける啼きかたをしてゐ
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