梅雨紀行
若山牧水
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)纜《ともづな》
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)聲は愈々|尖《とが》つた。
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、底本のページと行数)
(例)※[#「※」は「巾へん+「冖+二+目を上から順に並べたもの」、読みは「ぼう」、195−6]子を脱いだ。
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)足らん/\、
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
發動機船は棧橋を離れやうとし、若い船員は纜《ともづな》を解いてゐた。惶てゝ切符を買つて棧橋へ駈け出すところを私は呼びとめられた。いま休んでゐた待合室内の茶店の婆さんが、膳の端に私の置いて來た銀貨を掌にしながら、勘定が足らぬといふ。足らぬ筈はない、四五十錢ばかり茶代の積りに餘分に置いて來た。
『そんな筈はない、よく數へてごらん。』
振返つて私はいつた。
『足らん/\、なアこれ……』
其處を掃除してゐた爺さんをも呼んで、酒が幾らで肴が幾らでこの錢はこれ/″\で、と勘
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