所だけこの花の群つて咲くところのあるのを偶然見つけて、毎年それを見に行つたものだが、今でも咲くかどうかと、ふといま思ひ出された。東京の近郊にはこの花は少なかつた。相模野には非常に多い。
蝦夷菊、これは畑の花だが、東京近郊には頻りに作らるゝ。厭味の花と見ればそれ、それを忘れてぼんやり見てをればこれまた秋のはじめのものである。手にとつては駄目、畑のまゝで見るべきである。
ひしひしと植ゑつめられし蝦夷菊の花ところどころ咲きほころべり
蝦夷菊の花畑のくろにかいかがみ美しみ見ればみな揺れてをる
蝦夷菊の花をいやしと言ふもいはぬも眼のかぎりなるえぞ菊の花
彼岸花も水辺に多いが、みぞ萩もまたさうである。眼につかぬ花で、見てをればいかにも可憐である。
このあたり風のつめたき山かげに咲きてあざやけきみぞ萩の花
この花は、幼いころの記憶からか、私によく旧のお盆を思ひ出させる。続いては小さい紅色をして空に浮んでをる精霊蜻蛉《しやうりやうとんぼ》が思ひ出されて来る。
みぞ萩の花さく溝の草むらに寄せて迎火たく子等のをり
蝦夷菊は畑の花、それを野原に移した様な松虫草があ
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