になる男の子のよき遊び友だちである。
これが庭の柘榴《ざくろ》の木に、どうかすると三四匹も相次いで這ひ登つてゐることがある。苔の生えかけた古木の幹だけに、たいへんにその形が面白い。眞紅な花の散り敷く梅雨の頃が最もいゝ。
草花いぢりも夏の一得《いつとく》であらう。氣を換へるに非常にいゝ。筆の進まぬ時氣持の重い時、ひよいと庭の畑に出て、草をむしり、水を遣《や》る。言はず聴かずの暫しの時間を過ごすべく、私にはいまこれが一番である。花もよく、四五株の野菜を植うるも愛らしい。
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眼に見えて肥料《こやし》ききゆく夏の日の園の草花咲きそめにけり
あさゆふに咲きつぐ園の草花を朝見ゆふべ見こころ飽かなく
いま咲くは色香深かる草花のいのちみじかきなつぐさの花
泡雪《あわゆき》の眞白く咲きて莖につく鳳仙花の花の葉ごもりぞよき
朝夕につちかふ土の黒み來て鳳仙花のはな散りそめにけり
しこ草のしげりがちなる庭さきの野菜ばたけに夏蟲の鳴く
葱苗のいまだかぼそくうすあをき庭のはたけは書齋より見ゆ
いちはやく秋風の音《ね》をやどすぞと長き葉めでて蜀黍《もろこし》は植う
その廣葉夏の朝明《あさ
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