樹木とその葉
夏を愛する言葉
若山牧水
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)稱《とな》へらるゝ
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一首|蜩《ひぐらし》の歌を
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから3字下げ]
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夏と旅とがよく結び付けられて稱《とな》へらるゝ樣になつたが、私は夏の旅は嫌ひである。山の上とか高原とか湖邊海岸といふ所にずつと住み着いて暑い間を送るのならばいゝが、普通の旅行では、あの混雜する汽車と宿屋とのことをおもふと、おもふだに汗が流るゝ。
夏は浴衣一枚で部屋に籠るが一番いゝ樣である。靜座、仰臥、とりどりにいゝ。ただ專ら靜かなるを旨とする。食が減り、體重も減る樣になると、自づと瞳が冴えて來る樣で、うれしい。
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夏深しいよいよ痩せてわが好む面《つら》にしわれの近づけよかし
[#ここで字下げ終わり]
十年ほど前に詠んだ歌だが、今でも私は夏は干乾びた樣に痩せることを好んで居る。それも、手足ひとつ動かさないで自然に痩せてゆく樣な痩せかたである。耳に聽かず、口に言はず、止
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