る。さあ、これを見ていたまえ」
 帆村の顔は流石に朱のように紅潮した。彼は鉛筆をとりあげると、白紙をひきよせた。
「アラマソオオ、マダムイナイノ、ダマシタノネ、ソトハサムイワ、マサニ、オオサム……」
 と一度例の文句を片仮名で書いた。
 それから別の紙をとりあげて、また鉛筆を走らせたが、意外にもそれは日本式のローマ字だった。
[#ここから3字下げ、16字詰め、罫囲み]
ARAMASOO−MADAMUINAINO−DAMASITANO
NESOTOWASAMUIWA−MASANI−00SAMU
[#ここで字下げ終わり]
「さあ、いいかネ。これを逆に綴ってみるよ」
[#ここから3字下げ、16字詰め、罫囲み]
UMA[#「UMA」に傍線]SOOINASAMA[#「SAMA」に傍線]WI UMA[#「UMA」に傍線]SAWOTOSENONATI
SAMA[#「SAMA」に傍線]DONIANIUMA[#「UMA」に傍線] DAMOOSAMA[#「SAMA」に傍線]RA
[#ここで字下げ終わり]
「さあ出て来たぞ。傍線をしたなかでUMAというのは『右廻し』ということ、SAMAというのは『左廻し』ということだ。そのつもりで、これを日本文字に直してみよう」
[#ここから3字下げ、12字詰め、罫囲み]
右廻し――ソオイナ
左廻し――イ
右廻し――サヲトセノナチ
左廻し――ドニアニ
右廻し――ダモオ
左廻し――ラ
[#ここで字下げ終わり]
「どうだい! 判ったじゃないか。これがあの巨人金庫の鍵なんだ!」
 私は唖然《あぜん》として、この解読暗号を見つめた。なぜこれで解けたというのか判らない。しかし帆村は歓喜極まって室内を躍るかのように走りながら、外套だの帽子だのを集めた。
「さあ行こうぜ。早いところ、巨人金庫の腹の中を拝見しなけりゃならない!」
 私たちは、大急ぎで外へ出た。
(どうしてあれで解読されたのかい)と私は不審な点を訊ねた。しかし帆村は(金庫が開くまでは云えないよ)と頑張った。その代り別の質問をして、私の興味をあおった。
「おい君、あの巨人金庫の中に、何が入ってると思うかね」
「そりゃ判っているよ。もちろん江東のアイス王の一億何がしという目も眩《くら》むような財宝だろう」
「目も眩むような財宝? そんなものはもう入ってないさ。江戸昌が暁団を総動員して、すっかり持っていったよ」
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