い。さもなければ海賊船か。――で、その遭難の位置は、一体どこなのか」
「その位置は不明です。もっともSOSの電文のはじめに打ったのかもしれませんが、聞きのがしました。なにしろ電源がよわっているらしく、電信はたいへん微弱で、とうとう途中で聞えなくなってしまったのです」
「位置が分らんでは、救いにいけないじゃないか」
「はあ、そうです。そこでさっき、丸尾にSOSを発信している船の方向を測《はか》らせました」
「ほう、それはいい。で方向は出たかね」
「南南東微東と出ました」と答えると、
 船長は、ちょっと言葉をとめて考えこんでいたが、
「よろしい。では、これから針路をその南南東微東に向け、全速力で走ってみることにしよう。なお今後の信号に注意したまえ」
 そこで船長の電話は切れた。
 間もなく船が、ぐっと舳《へさき》をまげたのが感じられた。エンジンは、急に呻りをまして、今や全速力で、謎の遭難地点さして進んでゆくのであった。


   現場《げんじょう》附近


 いい気持で、睡っていた船員や火夫《かふ》達は、一人のこらず叩《たた》き起され、救助隊が編成せられ、衛生材料があるだけ全部船長室に並べ
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