幽霊船の秘密
海野十三

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)妖《あや》しい

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)船長|佐伯公平《さえきこうへい》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ちかっ[#「ちかっ」に傍点]と
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   南方航路


 そのころ太平洋には、眼に見えない妖《あや》しい力がうごいているのが感じられた。
 妖しい力?
 それは一体なんであろうか。
 ひろびろとしたまっ青な海が、大きなうねりを見せてなんとなく怒ったような表情をしているのだ。
 ときどき、水平線には、一条の煙がかすかにあらわれ、やがてその煙が大きく空にひろがっていくと、その煙の下から一つの船体があらわれる。
 それは見る見るどんどんと形が大きくなり、やがてりっぱな一艘《いっそう》の汽船となつて眼の前をとおりすぎる。
 黄色の煙突、白い船室、まっ黒な船腹《せんぷく》、波の間からちらりとみえる赤い吃水線《きっすいせん》、すんなりと天にのびた檣《ほばしら》――どれもこれも絵のようにうつくしい。見たところ、平和そのものである。
 だが、波浪《は
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