途も見届けたいものであると思っていた。これ等のことがはっきりしないうちは、幽霊船の謎を十分解いたとはいえないのだ。和島丸の遭難事件の原因をたしかに突きとめたとはいえないのである。古谷局長と貝谷とは、まず無電室へはいってみた。ここにも人影はなし、室内には器械がひっくりかえり、書類がとびちっている。
「この部屋も、ずいぶん、ひどいですねえ」と、貝谷は眉《まゆ》をひそめた。
「うんひどすぎる」局長は、ちらばっている書類をしきりに拾いだした。
「なにを探しているんですか」
「無電を打ったその記録書を探しているのさ。はたして例のSOS信号をうったのが、この幽霊船か、どうかをしらべておく必要があるのだ」
古谷局長は、まもなく数十枚の貴重な記録書を拾いあげた。
「これだけ集ったが、SOS信号のものは一枚もない。そればかりか、この汽船は、今日でもう二十日間も一本の無電も打っていないのだ」
「二十日間も、一本の無電も打っていないというと……」
「つまり、無電技士がこの部屋からいなくなってからこっち、もう二十日になるのだ。すると、この汽船内に大事件が突発してから二十日間は経ったという勘定になる」
「無電
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