つぜん大ごえをあげた。
「おーい、あれを見ろ。へんなものが浮いているぞ」
 探照灯は、さっそくその方へむけられた。
 なるほどへんなものが、波にゆられながら、ぷかぷか浮いている。
 木片《もくへん》を井桁《いげた》にくみあわせた筏《いかだ》のよなものであった。そのうえになにが入っているのか函《はこ》がのっている。
 そのとき船員は、舳にかけつけていた。
「おい、ボートをおろして、あれを拾ってこい」
 待ちかまえていた連中は、早速《さっそく》ボートを、どんと海上に下ろした。
 ボートは矢のように、怪しい漂流物の方へ近づいた。そして苦もなくその浮かぶ筏を、ロップの先に結びつけた。
 そしてボートは、再び本船へかえってきた。
 船員は、また力をあわせ、ボートをひきあげるやら、その怪しい筏をひっぱりあげるやら、ひとしきり勇《いさま》しい懸《か》けごえにつれ、船上は戦争のような有様だった。函を背負った筏は、船長の前に置かれた。
「これは一体なんだろう。いいからこの函を開けてみろ!」
 船長は、決然と命令をだした。函は蜜柑函《みかんばこ》ぐらいの大きさで、その上に小さい柱が出ていた。蓋《ふた》をと
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