になっているんだよ。なんでもご近所のドラ猫がとびこんだらしいんだがね、金網《かなあみ》の中であばれて、たいへんなことになっているよ」
「えっ、金網の中? それはたいへん」
隆夫は夢中で小屋の方へ走った。甲野博士もあとから、隆夫の母親と連れだって小屋の方へゆっくり歩む。
まったく小屋の中はたいへんなことになっていた。もっともそれは金網の箱室の中だけのことであったが、隆夫が一生けんめいに組立てた受信機がめちゃめちゃにぶちこわされていた。大切な真空管も、大部分はこわれていた。ドラ猫は中にいなかった。金網の戸がすこしあいていた。
「しまった」と隆夫は思った、よく閉めておかなかったのが悪かったのだ。なさけなさに、涙も出ず、隆夫は金網の戸をあけて中へはいったが、すみっこに鼠《ねずみ》のしっぽが落ちているのを見つけた。
「ははあ。するとこの中に鼠が巣をつくっていたのかもしれない。そのために、あの雑音が起ったのであろう」
問題が解けたように思った。
そこへ博士と母親とがはいって来た。
隆夫は、甲野さんにすべてを説明した。猫にあばれこまれたらしい話までした。
博士は、ちょっと考えていたが、
前へ
次へ
全96ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング