「さあ、鼠が巣をつくっていたのが雑音の原因かどうか、それはそうと考えられないこともないけれど、実際に装置を働かして聴いてみた上でないと、何ともいえないね」
と、学者らしい慎重《しんちょう》さでいった。
「困ったなあ。こんなにこわされたんでは、もう一度こしらえ直すことが出来るかどうか……」
「まあ、そうがっかりしないで、元気を出して、またつくってみるんだね。およそ研究というものは、辛棒《しんぼう》くらべみたいなものだ。忍耐心がないと成功はおぼつかない。……とにかく、装置の再建ができたら、また来て、見てあげよう。しかし君は、なかなかむずかしいことに手を染めたようだね。どれ、接続図と設計図とがあるなら出してごらん」
博士は図面を見て、いろいろとためになることを隆夫に注意した。が、最後にいった。
「……とにかく、とにかく、君は誰もやったことのない方法で受信をしようとしている。それだけに面白い。しかしはたして君に扱いきれるかどうか、疑問だね。そしてもしも異様《いよう》な雑音が出たなら、それを録音しておくといいね。録音しておけば、あとでゆっくり分析も出来る。ぼくがやってあげでもいい。まあ力をお
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