で彼は決心して、小屋から出ていった。母親にことわって、隆夫は外出した。彼が足を向けたのは、電波物理研究所で研究員をしている甲野博士《こうのはかせ》のところだった。若い甲野博士は、電波の研究が専門で、隆夫がアマチュアになったのも、この人のためで、隆夫の家とは遠い親戚《しんせき》にあたるのだった。
博士の批判
甲野博士にねだったかいがあって、博士はその日研究所の帰《かえ》り路《みち》に、隆夫の家へ寄ってくれることになった。
もう退《ひ》け時《どき》に近かったので、隆夫はしばらく待ってから、博士と連《つ》れ立《だ》って、わが家へ向った。
門を開いて、庭づたいに小屋の方へ歩いていると、お座敷のガラス戸ががらりとあいて母親が顔を出した。
甲野博士へのあいさつもそこそこにして、
「ねえ、隆夫。たいへんなことができたよ」
と、青い顔をしていった。
「どうしたの、お母さん」
「お前の研究室がたいへんなんだよ。さっきひどい物音がしたから、なんだろうと思っていってのぞいてみるとね……」
母親は、あとのことばをいいかねた。
「どうしたんですか。早くいって下さい」
「中がめちゃめちゃ
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