が集り、五千人の座席が満員になってしまった。
治明博士の講演は「ヨーロッパに於ける心霊研究の近況」というので、博士が身を多難《たなん》にさらして、各地をめぐり、心霊学者や行者《ぎょうじゃ》に会い、親しく見聞し、あるいは共に研究したところについて概略《がいりゃく》をのべた。それによると、心霊の実在と、それが肉体の死後にも独立に存在すること、そして心霊と肉体とがいっしょになっている、いわゆる生存中も霊魂と肉体との分離が可能であると信ぜられているそうである。更に博士は、一歩深く進んで心霊世界《しんれいせかい》のあらましについて紹介した。
聴衆は熱心に聴講した。会員たちはもちろんのこと、傍聴人たちも深く興味をおぼえたらしい、講演後の質問は整理に困るほど多かった。しかし時間が限られているので、それをあるところで打切って、いよいよ聖者レザール氏をこの舞台へ招くことになった。来会者一同は、嵐のような拍手をもっていよいよ始まる心霊実験に大関心を示した。
治明博士は、聖者を迎える前に、レザール氏の身柄《みがら》と業績《ぎょうせき》について述べた。これは実は博士のデタラメが交っていたが、一部分はアク
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