今どうしているか。
 母親は、そのてんまつを治明博士に次のように語った。
「隆夫が、あなた、急に女遊びをするようになってしまいましてね。監督の役にあるわたくしとしては、あなたに申しわけもないんですが。いくらわたくしが意見をしても、さっぱりきかないんですの。もっとも女遊びといっても悪い場所へ行って札つきの商売女をどうこうするというのではなく、隆夫のは、お友達の家のお嬢さんと出来てしまったわけで、下品《げひん》でも不潔《ふけつ》でもないんですけれど、やはり女遊びにちがいありません。まことに申しわけのないことになってしまいました。
 そんなわけで、隆夫はわたくしと考えがあいませんで、今はこの家に居ないのでございます。早くいえば、家出をしてしまったんです。でも隆夫の居所ははっきりしています。それは今お話した相手のお嬢さんのお家なんですの。三木さんといいまして、隆夫と仲よしの健《けん》さんのお家なんです。相手のお嬢さんというのが、健さんの姉さんで名津子《なつこ》さんという方です。つまり同級生のお姉さまと恋愛関係に陥《お》ちてしまったわけですの。名津子さんは二十歳ですが、隆夫は十八歳なんですから、
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