相手の方が二つも年齢が上になっています。いいことだと思いません。どうして隆夫が、そんな軟派青年《なんぱせいねん》になってしまったのか、もちろんわたくしにも監督上ゆだんがあったわけでございましょうけれど、まさしく悪魔に魅《みい》られたのにちがいありません。
 二人が結びついたきっかけは、名津子さんの発病でございました。いいえ、名津子さんは、それまではたいへん健康にめぐまれた方でしたが、あるとき急におかしくなってしまいましてね、健さんもたいへんな心配、それよりもお母さんはもっとたいへんなご心配で、名津子さんといっしょにおかしくなってしまいそうに見えました。それを聞いた隆夫は、自分が研究して作った器械を使って、名津子さんの病気をなおしてあげたいといって、その器械を持って三木さんのお家へ出かけたのでございますよ。その日帰って来ての短い話に、『お母さん、どうやら病気の原因の手がかりをつかんだようですよ。二三日うちに、きっとうまく解決してみせます』と隆夫が申しました。それから隆夫は、いつもの通り、電波小屋へはいったわけですが、隆夫がおかしくなったとはっきり分ったのは、その翌朝のことでございました。
前へ 次へ
全96ページ中74ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング