うずまき》の中にあって、ぼーッとしてしまった。
その後の物語
昔ながらの親子三人水いらずの生活が復活した。だが、それは奇妙な生活だった。これが親子三人水いらずの生活だということは、治明博士と隆夫だけがわきまえていることで、母親ひとりは、その外におかれていた。世間のひとたちも、一畑《いちはた》さんのお家は、ご主人が帰ってこられ、奥さんはおよろこびである。ご主人がインド人みたいなこわい顔のお客さんを引張ってこられて、そのひとが、あれからずっと同居している――と、了解《りょうかい》していた。
隆夫は、めったに主家《おもや》に顔を出さなかった。それは治明博士が隆夫のために、例の無電小屋を居住宅《すまい》にあてるよう隆夫の母親にいいつけたからである。そこに居るなら、隆夫は寝言《ねごと》を日本語でいってもよかった。なにしろ、事件がうまい結着《けっちゃく》をみせるまでは、母親をもあざむいておく必要があったから、隆夫はなるべく主家へ顔出しをしないのがよかったのである。隆夫には、たいへんつらい試練《しれん》だった。
もう一人の隆夫は、どうしていたろう。隆夫の肉体を持った霊魂第十号は、
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