器から、がらがらッと雑音《ざつおん》が出て来た。
「おやッ。雑音は出て来ないはずだが、なぜ出て来るんだろう」
 雑音を完全に消すのが特長であるこの受信機が、スイッチを入れるが早いか、がらがらッとにぎやかに雑音を出したものだから、隆夫はすっかりくさってしまった。
「どこが悪いんだろうか」
 電気を切ると、隆夫は金網戸を開いて、器械のそばへ行った。
 せっかくつないだ接続をはずして、装置の各パートを、たんねんに診察しはじめた。それが終ったのが、朝の三時だった。結果は、どのパートも故障はなかった。
 それからまた電源や出力側の接続をやり直した。それが完了すると、金網戸のところを外へ出、ぴったりと戸をしめた。そしてパネルの前に再び腰を下ろし、もう一度頭の中で手落ちはないかと確《たしか》め、それから金網越しに、奥の台の上に列立する真空管や、鋭敏《えいびん》な同調回路の部品や、念入りに遮蔽《しゃへい》してあるキャプタイヤコードの匐《は》いまわり方へいちいち目をそそいだ。
「こんどこそ欠点なしだ」
 確信をもって彼は、電源のスイッチを入れた。そしてしばらく真空管の温《あたた》まるのを待った。
 がら
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