は植物でもずっと下等な地衣類がはえているだけで、動物はまずいないのであろうといわれる。つまり火星人なんて棲《す》んでいないらしいというのだ。
しかし宇宙は広大である。直径十億光年の大宇宙の中には、地球と似た遊星《ゆうせい》も相当たくさんあるにちがいないし、従ってその住民がやはり電波通信を行っているだろうし、そうだとすればその通信をとらえる可能性はあるはずだと考えていた。
そしてあと二十年もすれば、われわれ人類はいよいよ宇宙旅行に手をつけるだろうが、それにはロケットをとばすよりも先に、電波をとばし、また相手から発射される電波信号をさぐることの方が先にしなくてはならない仕事だと思っていた。
そういう意味において、隆夫は、こんど組立てた受信機に大きな望みと期待とを抱いていた。
初めての実験
すっかり組立を終った。
隆夫は胸をおどらせて、金網の箱の外のパネルの前に、腰掛を寄せて、いよいよその受信機を働かせてみることになった。
電源を入れた。
しばらくすると、真空管のヒラメントがうす赤く光りだした。
そこで五つの目盛盤をあやつると、天井から下向きにとりつけてある高声
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