仕切りの中の奥に台がある。その上に例の受信機は据えられた。送信機の方は、もっとあとにならないと組上がらない。
パネルは、金網の上に取付けてあった。受信機とパネルの間には、長い軸《じく》が渡されてあった。金網の外で、パネルの上の目盛盤《めもりばん》をまわすと、その長い軸がまわって、受信機の可動部品を動かすのである。
金網はもちろんよく接地《せっち》してある。だからパネルの前に人間が近づいて、目盛盤をまわしても、受信回路の同調を破ったり、ストレー・フィールドを作って増幅回路へ妨害を与えたりすることはない。この金網は、じつは天井も床も四方の壁をも取り囲んでいて、つまり受信機は大きな金網の箱の中に据えられているわけだ。これほど念を入れてやらないと、波長がわずかに何センチメートルというような短い電波を、純粋にあつかうことはできないのだ。
隆夫は、自分の受信機が、非常にすぐれていると信じていた。これが働きだしたら、ひょっとすると火星などから発信されている電波を受けることもできるのではないかとさえ考えていた。
もちろん彼は、火星だけをあてにしているわけではなかった。最近の観測によると、火星に
前へ
次へ
全96ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング