た。土地を耕《たがや》している。それは遥《はる》かな遠方だった。
「広いところだなあ。一体ここはどこかしらん」
すると、彼の前へ、とつぜんパイプをくわえ、肩に鍬《くわ》をかついだ農夫が姿をあらわした。そして農夫の顔を見たとき、隆夫のたましいは、あっとおどろいた。
「ややッ、ここは日本じゃないらしい」
農夫は白人《はくじん》だった。
白人の農夫がいるところは、日本にはない。しばらくすると、小屋のうしろから、若い女の笑い声が聞えて、隆夫のたましいの前へとび出して来たのは、三人の、目の青い、そして金髪《きんぱつ》やブロンドの娘たちだった。
「たしかにここは日本ではない。外国だ。どうして外国へなど来てしまったんだろう」
そのわけは分らなかった。
隆夫のたましいは、農夫たちの会話を聞いて、それによってここがどこであるかを知ろうとつとめた。彼らの話しているのは、外国語であった。それはドイツ語でもなく、スラブ語でもなかったが、それにどこか似ていた。ことばとしては、隆夫はそれを解釈《かいしゃく》する知識がなかったけれど、幸いというか、隆夫は今たましいの状態にいるので、彼ら異国人の話すことばの
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